霊峯明神山に鎮座する峯神社は木花佐久夜毘売命(このはなさくやひめのみこと)を御祭神として奉齋する神社である。瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の妃神であり神武天皇の曾孫にあたる神である。
愛媛県大三島に祀られる大山祇神社は木花佐久夜毘売命の父神にあたる。維新後静岡県浅間(せんげん)神社から分霊を勧請されたものである。
椿村誌に「此神往古南海より登り海(毎)夜山上に焼明輝く里人不思儀の思をなし山上に登り尋ぬるに石に石花生附誠に海底より登りたりと思はる(或は、傅ふ阿部海中光物あり為に不漁なり村民潜きて山上に置く尚光ること甚し因て一丈余の地下に埋むと)因て在所峰神社と号し小祠を造りて之を祀る。干魃の時祈願を立て昼夜山上に寵るに祠内より一番黒蝶飛出で遥に南海に飛行く儀に黒雲起り大雨降り立毛育ちぬそれより今に至るまで旱の節はここに参寵せば降雨の利生あり云々」とある。
神社の周囲には高さ7メートルの自然右を基に約6メートル四方の石積みをして石囲いの中に神殿を造るという山上積石神殿で先史時代の類をみない貴重な古代祭祀神殿である。石積神殿が築かれる以前は古代の磐座(いわくら)が置かれ、神殿は磐座の上に築かれた遺跡の二重構造が見られるのも特徴である。町外はもとより年間を通じて参詣の人が絶えることはない。麓の由岐町阿部・伊座利傍示の人々には特に厚い信仰がある。
椿町動々・船頭ケ谷傍示の氏神として祭礼を9月18・19日の両日であったが現在は9月の第2週の土・日曜日に祭礼を行う。アサギマダラの飛来地として毎年蝶の好むアザミを麓より頂上に移植し、参道草刈り時にはアザミだけを残すという氏子達の蝶に対する熱い心づかいがつたわってくる。
四方を照らす木花佐久夜毘売命は安産・母乳の神、陸・海上の導きの神であり雨乞いの神とも伝えられるには神が白蛇となって現われ万人の願いを聞き賜う神でもある。満月には白蛇が龍と化し天空に舞うまぼろしを見ると今も語り伝えられる。峯に吹く風は神と人との魂をゆさぶり、照らす月光は綿津見を黄金に映し、きらめく波光は古代の世へといざない不思儀なエネルギーを与えてくれるみはるかすもの清らなる霊峯である。
「名月や たがなつけしぞ 明神山」 |
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