金刀比羅神社/こんぴら神社/徳島阿南


子供神楽「博学狸こんぴら三本足狸問答」

(神前に向い、ニ礼二拍手一礼、下に降りて参拝客に礼)
 皆様ようこそのお参りでございます。只今より奉納致します子供神楽「博学狸こんぴら三本足狸問答」につきましてご案内申し上げます。(再び礼)

 このお神楽は、この地における昔からの言い伝えでございまして、登場いたします狸は阿波狸列伝の中でも非常に知恵にたけ、又狸ぶりもたいそう良かったので、小松島の金長狸が、その学識を敬い、合戦の折には作戦の相談役とした程の、博学狸でございます。

 その狸が、いつの頃からか、この金刀比羅神社の境内に住みつき、この下のこんぴら淵に出ては通りすがりの村人や、参拝の方々をたぶらかしたり悪さをしたりして、いたずらを楽しんでいたのでございます。

 ある時のこと、福井町は元末に住む茂庄兵衛という鉄砲の名人が、こんぴら淵のあたりを通りかかりましたところ、それとは気付かぬ狸が、いつものように小石のつぶてを投げつけ、からかったのでございます。かねてよりこうした機会を狙っていた茂庄兵衛は、鉄砲を肩にかついだ後ろ向きのまま、引き金を引き、さすがの狸も名人の手にかかってはさけるひまもなく、後ろ足をうちぬかれ、三本足で歩くようになりました。以来その狸は、村人たちから「こんぴらの三本足」と呼ばれるようになったのでございます。

(一呼吸)本来なら、帳りの下りる刻前のことですが、偶然二人の飛騨守が、この拝殿で出くわすところから始まり、世にもめずらしい狸問答をしたと伝えられております。さてさてどちらが本物の神官でどちらがこんぴら三本足の狸でございましょうか。

 しんしんと生い茂る境内を想像し乍ら、どうぞ古のはるか昔、その良き時代におもいを馳せながら、どうぞごゆるりとご拝観下さいませ。(深々と礼)

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