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昇殿二先ヅ太鼓(三本足) 丹平昇殿 |
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● おのれは何者じゃ−
● わしは飛騨守丹平じゃ
● おのれ、化けも化けたり。飛騨守丹平に化けるとはおこがましい。早々に退散せい
● ハハハ。何をぬけぬけと。おこがましいのはそちらじゃ。神罰をうけぬうちに退散せい
− 丹 平 着 座 ─I
● なるほどの〜、村人がうわさするこんぴら三本足の狸とはお前さんのことか
● だまれ!こんぴら三本足の狸とはおのれのことじゃろう(勿で相手をさす)
● そうかそうか社頭に出てきてはお参りの人を悩ませ、帳がおりてはこんぴら淵に出ては村人をたぶらかしているの由、しかし、あの夜は通りかかった相手が悪かったの〜。村でも鉄砲の名人といわれる元末の茂庄平衛とは気づかなかったようじゃの〜。お前さんがいたずらばかりするから、茂庄平衡はかねてからその機会を待っていたとのことよ。聞くところによると鉄砲を肩に担いで後ろ向きに足をうたれたというではないか、それゆえに三本足となったのじゃろう。それ以来村人はお前さんのことをこんぴらの三本足と言うておるぞよ
● ハハハハ。何をたわけたことを
● ほんにいたずら狸とは困ったものじゃの〜
● 何を申すか。わしこそが飛騨守丹平じゃ!(笏で相手をさしながら)お前こそ神官のような体をなしているが、神官とはノオー、朝のお神楽につづいて掃除掃除の毎日よ。時にはノオー、村人の相談にも耳をかたむけ、学の道も教えてやらねばならぬ。それに、日々己も研鎌せねばならぬのじゃ。それがお前にはできようか
● 問えば答え、せまれば問いかけ、なかなか流水の弁じゃが、なるほど姿は神主にみえるが人はだませても神様はだませぬぞよ。いたずらはほどほどにせねば、また痛い目にあうぞよ
● だまれ!何をもってそういわれるか (笏で相手をさす)
● ハハハならば尋ねるが、いかに上手に化けても畜生のあさましさ、神の意思にはかなわぬと見えるは。これ!その勿の持ち方はなんじゃ!手が違うぞ!(笏で三本足をさし一喝)
(三本足、相手を前かがみに勿を見る。あわてて勿を右に持ちかえる。もちかえる時に一度笏をおとす)
お前も知っておろうが、こんぴら橋の下には美しい水が流れ、そしてこの山は松琴山というて、松に吹く風が琴をかなでるように聞こえるから松琴山といわれるのじゃ。お前さんもこの山のどこかに住んでいるであろうが、松風のような清らかな気持ちにはなれぬのか。聞くところによれば、小松島の金長狸が合戦の折りには知恵者のお前を頼って相談にくるというではないか。お前さんはなかなか知恵にたけ、人間で言えば頭脳明晰じゃ。いつまでも悪さをせず、どうじゃ、これからはいっそのことこんぴら様の神使いとして、人を助けることにしてはどうか。
● (しばらく沈黙に勿を正中に前かがみ)まことにありがたきお言葉。これからは、心を入れ替え、飛騨守殿が毎夜村人に諦ずる学の道を、拝殿の床下にて拝聴させていただき、やがては一代の博学狸となれますよう一生懸命努めます。
● そうかそうか、まことに良い心掛けじゃ。真の心で努めれば、神の道にも通じようぞ。そしていづれはわしが留守の時には夕神楽をお前に委せようぞ。そうじや(笏で手をたたく)そのあかつきには松雲斎と言う名を与えようではないか
● (笏を正中に前かがみに云う) ハハー。ありがたき身に余るお言葉、松雲斎という名を頂くからには、それに恥じぬよう狸道をきわめ、世の人々の幸せをひたすら祈らせて頂きます。
● うんうん。それでこそ博学狸じゃハハハハ・・・・
● 今日はこんぴらさんの祭りじゃ
◎ いやいやめでたい、めでたい
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